マネージャーなのに「求められている役割」が十分ではない! ~ 経営チームの期待に応えるマネージャーへと強化するための5つの要素

多くの企業の経営者や経営幹部たちは、部長や課長などの中間マネージャーの成長度合いや仕事ぶりに不満を感じているようです。クライアント企業の業務変革の支援をしていますが、業務変革を遂行できる部長・課長は一握りです。業務変革を担うどころか「管理すらできていない」という声もお聞きします。

「組織の成果はマネージャー次第」なのですが、実際に企業内でどのようなことが起こっているのでしょうか?

クライアント企業で実際に発生していた問題点を例として、「マネージャーが管理できていない原因」と「現在必要とされているマネージャーへと強化する5つの要素」を解説します。

経営チームの期待に応えるマネージャーへと強化するための5つの要素

マネージャーが管理できていない! 3つの部署で発生していた問題とは?

その1. 受注業務部門の部長の悩み「部内の業務が期日までに終わらない」だが、実は…

お客様からの注文に対応する業務を行う部署の部長の悩みは、「当日中に処理できない件数が多く、かつ、ミスが増えている!」ことでした。処理できずに翌日へ持ち越しとなる件数が多いのですが、会社の業績は悪化していたために「残業は1日1時間まで」という制限が決められていました。業務担当メンバーからは、「もう少し残業をさせてくれれば、当日中に処理ができ、ミスも減るのに。作業時間が足りないからだ!」という不満も出ていました。

そのような声が多いために、部長は「お客様からのクレームやメンバーのミスも増えています。もう少し残業を認めて下さい!」と会社に要望していました。ですが、財務状況が悪いために会社は残業を許可しませんでした。「このような状況の中でどうしたらミスを減らし、当日中に出荷指示が完了できるか?」それが部長の悩みでした。

私たちがこの問題解決の支援をすることになり、その業務を調べてみますと、お客様からの特別な出荷依頼があった時の「特別出荷承認プロセス」でかなりの手間がかかっていることがわかりました。特別な出荷依頼とは、「海外に出荷してほしい」「宿泊先のホテルに出荷してほしい」「受け取り時間を指定したい」といったお客様の要望に応えるためのものでした。これらは別途経費がかかるために上司承認が必要でした。

その特別出荷は業務量全体の30%近くを占めていました。それだけの量があるにもかかわらず、その特別出荷の承認は、この会社内で使われている業務システムでは行うことができませんでした。そのため、手作業で行う必要があり、そのことが社員たちへ負荷となっていた上に、ミスを増やす原因となっていたのです。

その2. 営業事務部門の部長の悩み「どうしたら若手が育つのかわからない」だが、実は…

営業事務部門の部長は、「若手が育たない。特に、新入社員が一人で業務ができるまでに長い時間かかる。」という悩みを抱えていました。その部署では、メンバー一人ひとりの毎日の事務処理件数を収集していました。社内システムからその処理件数が出力できるようになっていたからです。ですが、その部長は、「若手が育たない!」という不満があるにもかかわらず、手元にあるせっかくのデータを活用して問題を解決しようとするのではなく、「どうすればよいのか?」と悩んでいるだけの状態でした。

そのデータの分析とともに業務状況を観察しますと、「若手が育たない!」以外の問題も見えてきました。そのデータでは、一番処理量が多い人と一番少ない人の間には2.5倍もの差がありました。作業能力の高い特定の人に仕事が集中してしまい、そのために、その人が若手を育成している時間がとれない状況にあることもわかりました。せっかく社員を採用しても、忙しい人は忙しいまま、新人は余裕があるまま、という状況を変えることができていなかったのです。これでは新入社員が一人で業務を行えるようになるまでに長い時間かかるのは当然でしょう。

また、作業ができる人たちは、「処理量が違うのにそれが評価に反映されていない!」という不満を持っていることもわかってきました。その評価をめぐる人間関係の歪みから、若い人が定着しない事態にまで陥っていたのです。

その3. 営業部長の悩み「商談数が減ってしまっている」だが、実は…

ある営業部長は、「今期の売上目標を達成できないのではないか?」と不安を感じていました。その為、メンバーたちへ「商談の50%以上は1ヶ月以内に受注すること」という指令を出しました。今期の売上目標を達成するためには、「発見した商談を早く受注することが必要だ」と考えたからでした。

この部長がこのような指令を出したことには理由がありました。この部長が営業をしていた時代は、「御用聞き営業スタイル」でした。お客様に足繁く通い「何か買うものはありませんか?」「今月は何個必要ですか?」という営業スタイルでした。そのため、ほとんどの案件は1ヶ月以内に注文がもらえるものばかりだったのです。

しかし、その後、この会社の営業スタイルは提案型営業に変わりました。以前と比べると商談金額は2~5倍へと増えましたが、その分、商談期間は2~4ヶ月かかる状況へと変化していたのです。そのため、営業部長の指令は逆効果となっていました。営業パーソンたちは、会社に新規の商談を報告すると1ヶ月以内に受注しないといけなくなるため、商談を報告しなくなったのです。その結果、売上目標達成に必要な保有商談件数がこれまで以上に減ってしまい、売上目標達成ができませんでした。

3人の事例から考える、「マネージャーが管理できなくなっている原因」とは?

今、多くの企業で「マネージャーが管理できない。経営チームの期待に応えられていない。」という言葉を聞きます。その根本的な原因は、過去から比べ、現在はマネージャーに求められている仕事がますます高度になっているためです。

このことは、3人の部長の事例でも明らかです。労働時間の短縮、メンバー育成の難しさ、承認プロセスの煩雑さ、仕事の方法やツールの変化など、働く環境が大きく変わり、日常の業務は高度になりました。その結果として、職場で発生している問題も複雑化し、過去の管理・マネジメント方法では対応できなくなっています。

過去、管理者・マネージャーに求められていた仕事は下記でした。

◆ 問題が発生しないように報告を受ける
◆ 業務ができるように育成する
◆ 会社の決定事項を通知する
◆ メンバー間の調整を図る

それに対して、現在の管理者・マネージャーに求められることは、上記だけではありません。上記ができることは必須で、そのうえ、さらに下記のことまで求められるようになっているのです。

◆ 担当する組織の生産性を高め、より高い目標を達成する
◆ メンバーの能力を最大限に引き出す

前述した3人の部長の事例から明らかなように、マネージャーには、「複雑化した、より困難な職場状況においてでも、より高い目標を達成する!」ことが求められています。

多くの企業には「高い目標を達成する!」ための管理や育成ができるマネージャーが不足している

ある転職支援会社のマネージャーに聞いた話ですが、それは現在のマネージャーの状態を適切に表現しているものでした。転職を希望していたある企業の部長へ「なにができますか?」と聞きました。そうすると、その人は「部長ならできます」と答えました。この回答の意味することは、以前のマネージャーに求められていた「調整という仕事ならばできる」ということです。しかし、「生産性を高める/より高い目標を達成する」マネジメントを経験したことがないので、そのような高い目標を達成するためのマネジメントができる能力がありません。現在、多くの企業の中間マネージャーは、このような「過去求められていた範囲のマネージャー業務しかできない」状態です。

現在、社員たちに求められていることは、「仕事ができるようになる」ことは当たり前で、その上で「能力を最大限に発揮すること」です。しかし、多くのマネージャーは、「以前求められていた範囲内でのマネージャー業務しかできない」状態であるために、「メンバーの能力を最大限に引き出す方法」を知らずにいるのです。

マネージャーの管理力強化のための5つの要素!

経営チームが期待していることは、「高い目標を達成する」ことです。管理者・マネージャーが、チームを率いてその目標を確実に達成できるようにするにはどうしたら良いでしょうか?

管理者・マネージャーが期待に応えて活躍できるために、私たちは「『仕事の仕組み化』のスキルを鍛える」ことを推薦しています。

(【参照】チームで結果を出すためのマネジメントスキル「仕事の仕組み化」 ~ リーダーやマネージャーとして「チームを率いて結果を出す仕事の技術」(3)

多くの企業のマネージャーの「仕事の仕組み化スキル」を強化する必要があります。なぜならば、自ら管理をする業務の全体像を明確に図示できる能力がマネージャーに備わっていなければ、チームを効果的に管理・改善することができないからです。その「仕事の仕組み化スキル」の強化には、以下の5つの要素で強化することが大切です。

(1) マネジメントしている組織・業務のOutput(成果や達成基準)を明らかにできること(Outputは、「成長」「満足」「生産性」といった抽象的な言葉だけではなく、具体的な数値目標として明らかにすることが大切)
(2) そのOutputを実現するための業務プロセスを図示できること(下図)
(3) 業務プロセスを構成する各作業項目の目標値の設定できること
(4) 各作業項目の目標値の未達成の人が、今後達成できるような指導や育成ができること(「やれ!」という叱咤激励だけではダメ)
(5) 各作業項目の達成度の推移をモニタリングし、生産性を向上する対策を実施できること

成長力強化セミナーのご紹介

『組織』と『個』の相互の成長に役立つ『プロフェッショナル育成』などのセミナーを毎月開催しています。ぜひご参加ください。

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管理力のあるマネージャーの強化方法を導入しよう!

高度成長期・バブル期の日本のように、社会が成長している時代ではありません。日本の成長率は1~2%程度です。そのような中、チームが高い目標を達成できるか否はマネージャーの能力次第です。組織がより高い目標を達成するためには、能力の高いマネージャーの存在が欠かせません。

私たちが「業務変革」や「マネージャー強化」の支援をしているクライアント会社では、実際に10%以上の成長を達成できています。正しいマネジメント方法を身につければ、10%以上のパフォーマンス改善は困難なことではないのです。

多くの企業が、「マネージャーの役割や仕事の定義」そして「マネージャーの強化方法」が十分ではない状況です。今は、そのマネージャーをアウトソースして、外部に任せる企業も増え始めています。アウトソーシングするのではなく、自社で「管理力のあるマネージャー」を強化することを選択するならば、今回解説した5つの要素を利用して、マネージャーの能力強化を実施することからはじめてください。実施したがうまく行かない場合には、遠慮なく連絡ください。うまくいかないことには必ず原因があります。私たちは、あなたと一緒にその原因を追求し、「高い目標を達成できるための管理ができるマネージャーの強化」を支援します。

また、マネージャーの仕事そのものをアウトソースすることがお望みであれば、私たちへご依頼ください。私たちは、マネージャーの仕事を請け負うだけではなく、その支援を通じて、あなたの会社の管理・マネジメント体制を整えます。自社内でマネージャーを強化する方法、または、アウトソースする方法、いずれにしても、私たちは経営者の期待に応える管理・マネジメント体制、ひいては業績向上のために全力で支援させていただきます。

(本ノートは、2016年7月31日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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