キックオフミーティング成功でプロジェクトを加速! ~ 失敗事例を通して学ぶキックオフミーティング準備の方法

最近では、日本の企業でも “キックオフミーティング” という言葉が普通に使われるようになりました。
その背景には、チームで高い目標達成を目指すプロジェクト的な仕事の割合が増えたという働き方の変化があります。
キックオフミーティングは、チームが一丸となって挑むプロジェクトが成功するかどうかを左右する大切な役割を担っています。
キックオフミーティングの進め方は各社によって様々で、準備不足のためにキックオフミーティングから失敗していたケースも目に付きます。
私たちがコンサルタントとして支援したクライアント企業のキックオフミーティングの準備・進め方・発生した問題を通して、キックオフミーティングを成功させる秘訣について解説します。

プロジェクトのスタートダッシュを加速する秘訣はキックオフミーティングの周到な準備!

企業では、プロジェクト的な仕事の割合が増えている!

「ただ言われたことを行う!」という状況から「チームの成果を最大化する!」へ、働き方の変化が求められています。
そのため、現在では、企業内で様々なプロジェクトが取り組まれています。

一般的に企業内で取り組まれているプロジェクトには、下記のような特徴があります。
  • 達成すべきゴール(達成基準)がある
  • 複数人のチームで推進される
  • 一定期間取り組む
  • (場合によって)投資を伴う
  • 私たちも過去、様々なクライアント企業のプロジェクトの支援を行いました。その支援をしたプロジェクトには下記のようなものがありました。
  • 部門や部署の年初(期初)に行われる会議 (新素材を開発する、売上目標30億円を達成する)
  • 業務変革や業務プロセスの改善 (生産性を10%上げる)
  • 新システムの導入 (システムをクラウドに置き換える)
  • 新規市場への参入の取り組み (アジアでの直販体制を行なう)
  • 次世代経営者の育成
  • 新しい部門や部署を立ち上げた時の最初の会議
  • このような企業で取り組まれるプロジェクトには、「3つの役割」が存在しています。
  • 【プロジェクトオーナー】プロジェクトの遂行を決定し、ヒト・モノ・カネなどの資源の活用を承認する人
  • 【プロジェクトマネージャー】プロジェクトを円滑に遂行するためのマネジメントをする人
  • 【プロジェクトメンバー】プロジェクトに実際に取り組む人
  • 通常、私たちのようなコンサルタントは、プロジェクトオーナーからの依頼を受けてプロジェクトマネージャーとともにプロジェクトが成功をおさめるように支援をいたします。

    キックオフミーティングとは?

    企業でプロジェクトに取り組む際には、キックオフミーティングが必須となります。
    キックオフミーティングは、プロジェクトに関わるメンバーが一堂に会し、これから始まるプロジェクトの目的や意義を理解するためのイベントです。
    そこでは、プロジェクトに関する下記について全員で共有化します。
  • (1) 会社は何を目指しているか?
  • (2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
  • (3) そのために会社が直面している問題は何か?
  • (4) 私たちは何を期待されているか? (いつまでに、何を達成するか?)
  • (5) 私たちは何をすればいいか? (役割は何か?)
  • 以上のように、キックオフミーティングはプロジェクトオーナーやプロジェクトマネージャーの考えや決意を表明し、メンバーの動機づけを行い、心に火を点すことで、参加者全員がひとつになってプロジェクト成功へのスタートをできる大切な場です。

    こんなキックオフミーティングはNG!

    「キックオフミーティンがうまくいくかどうかで、プロジェクトが成功するかどうかの8割が決まる」と言われるくらい大事なイベントですが、多くの会社が行っているキックオフミーティングは、準備不足で場当たり的なキックオフミーティングを見かけます。

    「なぜ重要なのか?」を理解しないまま、なんとなく集まるキックオフミーティングは、残念ながらプロジェクトのプラスになりません。NGなのは下記のようなケースです。
  • プロジェクトオーナーやマネージャーが準備不十分のまま開催してしまう
  • 資料が用意されていない
  • プロジェクトオーナーやマネージャーの決意が伴っていない
  • キックオフミーティングの大切さを理解していない
  • 参加者は忙しい仕事の合間を縫って、会場に集まります。
    そうした貴重な場で何を伝えたいのか、そしてそれを全員にしっかり伝えるためには何が必要か、プロジェクトを管理する側が事前にしっかりと練ることが重要なのです。

    事例紹介: 「業務プロセス改善プロジェクト」キックオフミーティング

    キックオフミーティングは、全体像の設計から始めよう

    あるクライアント企業の「法人営業(BtoB)の社内業務の生産性を10%以上改善する」という目標にむけた「業務プロセス改善プロジェクト」を例にとり、成功するキックオフミーティングを解説します。

    プロジェクトオーナーの事業部長、プロジェクトマネジメントを担う部長と私の3人で、「キックオフミーティングをどのように進めるか?」について事前打ち合わせを持ちました。
    その打合せでは、私たちが用意した進行案(アジェンダ案)のたたき台をもとに、下記の通りキックオフミーティングの具体的な進め方とそれぞれの役割について協議しました。
  • (1) 参加者
  • (2) そこで伝える業務改善の目的や重要メッセージ
  • (3) 発表者はなにを説明するのか?
  • (4) 進行手順は?
  • (5) キックオフミーティングの成功基準
  • この事前打ち合わせによって、下記の役割で発表することを合意しました。
  • (1) 事業部長 → 方針説明、事業部全体としての財務状況や改善目標
  • (2) 部長 → 今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲、部長としての決意
  • (3) コンサルタント → 業務改善を行うスケジュール・それぞれの役割の解説
  • キックオフミーティングは1週間後です。
    それまでに各々が発表で使用する資料を準備することになりました。

    メンバーの迷いを取り払う綿密な事前打ち合わせが必須!

    この事前打ち合わせの後、プロジェクトマネージャーを担う部長から「キックオフミーティングのために、こんなに中身が濃い打ち合わせを行う必要ってあるんですか? 今までやったことがなかったんですが…」と聞かれました。
    (この部長はキックオフミーティングに参加したことはあっても、過去にキックオフミーティングの事前会議に参加したり、キックオフミーティングで発表する機会がなかったことが後で判明しました)

    キックオフミーティングの事前打ち合わせは大変重要です。
    というのも、業務プロセス改善プロジェクトは、実際に業務を担って働いている人たちがほとんどのタスクを担うことになります。
    プロジェクトオーナーである事業部長や、プロジェクトを共に進める部長、私たちが行なえることは限られています。
    現場の人達に意欲的に取り組んでもらうためには、プロジェクトオーナーやマネージャーの発表に一貫性があり、構造的・合理的であり、「成し遂げる!」という決意や意志が伴っている必要があります。彼らがどれだけ取り組んでくれるか、が成功の鍵なのです。
    「場当たり的なものではなく、事前にしっかりと内容が積められていて、リーダーたちは共通した考えになっている!」と感じさせるものでなければなりません。

    準備が不十分で推進者の意思統一が図られていないキックオフミーティングでは、「上の人たちが言っていることが食い違っている。これでは今回もうまくいかないだろう!」と感じさせてしまいます。
    最初からそんなことを感じさせてしまっては、プロジェクトがうまくいくはずはありません。

    少なくとも発表者全員の骨子を事前に確認し、それぞれが相関性のあるものにしなければなりません。
    そうした下ごしらえが現場の人たちに「上がしっかりと準備して始めようとしている重要なプロジェクトなんだ!」と感じさせ、「やらなきゃ!」という意欲を促すのです。

    キックオフミーティングで参加者全員に理解してもらうこととは?

    キックオフミーティングの目的は、発表ではありません。参加したすべてのプロジェクトメンバーが下記を理解することが重要です。
  • (1) 会社は何を目指しているか?
  • (2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
  • (3) そのために会社が直面している問題は何か?
  • (4) 私たちは何を期待されているか? (いつまでに、何を達成するか?)
  • (5) 私たちは何をすればいいか?
  • 例えば、キックオフミーティングが終わった後、プロジェクトメンバーへアンケートを行い、(1)~(5)についてできるだけ正しく理解できているならば、そのキックオフミーティングは成功といえます。

    部長、その発表では意味がありません! 当日に発生した問題

    さて、キックオフミーティング当日です。
    事前打ち合わせで確認したとおり、最初に事業部長が会社の直面している状態と目指している姿を、スライドと配布資料を用いて発表しました。
    事業部長は、パワーポイントのスライド4枚準備し、事業部として達成しなければならないことを明らかに伝えました。

    次は部長の順番です。
    部長の役割は「今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲、部長としての決意」を説明することです。
    ですが、部長からは3分程度の発表で「事業部長が言ったとおりです。必要だから頑張ってほしい!」というだけのものでした。
    スライドも準備してなく、言葉だけの説明で終了しました。

    これではダメです。
    口でいくら説明しても誰も聞いていません。記憶に残りません。
    人は、言葉だけで行われた発表を十分理解できません。目と耳を使うことがより理解できるようになるのです。視覚で補足しなければなりません。
    「パワーポイントを使っている会議は生産性が悪い」と言われることがありますが、視覚的に訴えることは非常に重要です。
    何10枚のスライドを準備する必要はありませんが、こうした場では要点がまとめられた1-2枚程度のスライドは必要です。

    この部長が担っていることは、プロジェクトマネージャーとして「今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲、部長としての決意」を伝えることでした。これらの内容は、プロジェクトの中核を成す大切なものです。
    このプロジェクトの遂行中において、メンバーが壁にぶつかったときに何度も立ち戻り、「勘違いがないか?」「誤解していないか?」「どこまで達成できているのか?」「どのように修正していけばよいか?」を確認・検討するための内容です。
    ですから、しっかり文書としてまとめ、いつでも振り返りが出来るようにしなければならないものでした。

    今回の部長の発表は説明が不十分でした。参加者にプロジェクトを円滑に遂行するための機会を与えていないのです。
    本来もっと盛り上げることができた参加者の動機づけを、低い段階でとどめてしまったといえるでしょう。
    (このクライアント企業の場合には、後ほど、私たちが資料を作成し、もう一度説明する時間を持つことになりました)

    失敗を機に、事業部長は業務改善ができる人材育成へと舵を切った

    このキックオフミーティングの後、プロジェクトオーナーの事業部長から「部長と言っても、業務プロセス改善の経験がないマネージャーがうちの会社には多いのです。業績を向上するためには、業務プロセス改善ができる人材を増やしていかなければいけません。そこで今回のプロジェクトで新たに若いメンバーから幾人かを選び、彼らにそれができる人材になってもらうことにしました。ティ・スクエアさんには、追加で“業務プロセス改善ができる人材育成”にも取り組んでもらえますか?」
    という依頼がありました。

    業務プロセス改善ができる人材は、会社にとって新たな成長を切り拓くことができる宝です。
    若い人を抜擢し、プロジェクトメンバーの一員とすることで業務プロセス改善を経験させ、会社の業績向上を担う人材に育てようとする事業部長の決断は素晴らしいものだと思いました。

    なんのためのプロジェクトか、誰がなにを担うのか?

    キックオフミーティングはプロジェクトの目的を共有する場です。
    なんのためになにをやるのかを、参加者全員に把握してもらう大切なイベントです。
    繰り返しになりますが、開催前はプロジェクト管理者間で下記の準備を万端にしておきましょう。

    明確にすること
    (1) 会社は何を目指しているか?
    (2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
    (3) そのために会社が直面している問題は何か?
    (4) 私たちは何を期待されているか? (いつまでに、何を達成するか?)
    (5) 私たちは何をすればいいか?

    準備すること
    (1) プロジェクトオーナー
    → 方針説明、部門全体としての財務状況や改善目標
    → プロジェクトの最高責任者としての決意や期待
    (2) プロジェクトマネージャー
    → 今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲
    → プロジェクトを推進するマネージャーとしての決意
    → 業務改善を行うスケジュール・メンバーそれぞれの役割

    キックオフミーティングの成功が、プロジェクトを左右するといっても過言ではありません。
    このような事前の準備をしっかり行なうことが、プロジェクトの成功へとつながっていくのです。

    多くの企業では、特に、営業系の組織においては、業務改善プロジェクトに取り組んだ経験のある社員は少ないです。プロジェクトを成功に導くためには、推進を支援できる存在が必要となります。
    私たちは、そのようなプロジェクト推進支援を行っております。貴社のプロジェクトを成功に導くために、私たちへご依頼ください。

    (本コラムは、2016年5月22日に書かれたものを再編集しました)
    文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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