営業情報の規律(5S)を徹底し、生産性・信頼性・差別化を高める Vol.031

営業情報の規律(5S)で、商談を生み出し成約する生産性と信頼性を高める

ものづくりの現場(製造の現場)では、生産性や信頼性を高めるために5Sという規律が重視されています。
多くの日本の製造業は5Sを大切にし、高い生産性や信頼性や強力な差別化を生みだしてきました。
営業活動も、「商談を生み出し、そして、成約していく商談というものづくりの工程」と考えることができます。
営業組織の生産性や信頼性や差別化を高めるために、規律(5S)は有効です。
しかし、営業の現場では、規律(5S)が徹底されていません。


ものづくりの規律(5S)とは?

「ものづくり」という生産管理の観点での5Sの定義は、下記になります。

【整理 (Seiri)】 必要なものと不必要なものを区分し、必要なものを片付けること
【整頓 (Seiton)】 いつも同じ場所に同じ方向に材料を供給することや治工具を配置する定置管理
【清掃 (Seisou)】 必要なものについた異物を除去すること
【清潔 (Seiketsu)】 整理・整頓・清掃が繰り返され、汚れのない状態を維持していること
【躾 (Shitsuke)】 決めたことを必ず守ること
(注意インターネットで調べてみると、違う定義・表現もあるようです)

整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)、それぞれのローマ字読みの頭文字が全て”S”のため、5Sと呼ばれています。


ものづくりの規律(5S) / 整理と整頓

生産現場では、原材料があり、その原材料を道具や設備で加工し、調合し、そして、最終的に製品が生み出します。
その一連の工程において、5Sの整理・整頓とは、主に生産性を高める上で重要な要素です。「材料はどこにある?」「加工する道具、どこにしまってある?」は、「探す時間」を必要とさせ、そこに無駄な時間が発生し、生産性に影響を与えます。


ものづくりの規律(5S) / 清掃と清潔

5Sの清掃・清潔は、主に信頼性・品質の高さの観点で重要です。
製造するものや工具・設備が汚れ、余計なごみがついてしまうと、加工や調合などのでき具合(完成品の質の高さ)に大きな影響を及ぼします。


ものづくりの規律(5S) / 躾(しつけ)

最後に、5Sのしつけとは、整理・整頓・清掃・清潔をしっかり継続する決意と努力です。
5Sのうちで最も重要と言われているものです。


営業では、規律(5S)が浸透していない。その原因は?

営業という活動が、「商談を生み出し、そして、成約していく商談というものづくりの工程」であるならば、営業現場においても5Sは生産性と信頼性を高めるために重要で取り組むべきものです。
しかし、工場と比べますと、営業の現場ではまだまだ規律(5S)の徹底度は低いのです。
その原因は、工場と営業では「仕事の行われ方」が違うためです。


工場であれば、製造するものは「形あるもの」です。
材料でも道具でも形があり、目に見えるものです。
しかし、営業組織が生み出そうとするものは「商談」や「成約」です。
その中で扱われるものは原材料や設備ではなく、情報です。
残念ながら、形として目に見えるものではありません。形ではない以上、整理・整頓は難しくなります。
特性の違いの1つ目は、「目に見える / 見えない」です。


2つ目の違いは、行われる場所です。
工場であれば、通常は会社の敷地内にあります。
そして、社内で行われていることなので、現場に行き、見て観察することが簡単です。
社内ですので、「5Sの各要素が実現できているか?」多くの人が観察することができます。
しかし、「商談」が行われている場は、お客様の会社内、すなわち社外です。
お客様の会社内で行われますので、制限が多く、そして、観察しづらいです。


目に見えづらい、観察・評価しづらいことが、「商談を生み出し、そして、成約していく商談というものづくりの工程」というプロセスにおいて、規律(5S)を徹底しづらい原因です。
様々なクライアント様の営業力強化の支援をしてまいりましたが、以上の原因により、実際の営業の現場では営業情報に関する規律(5S)が徹底されていません。


例えば、営業マネジメントと営業との間において、商談の進捗状況を確認しようとする際に、下記のような会話が行われていました。
– お客様は関心がありそうです
– これは売れますよ
– どうも予算がとれそうもないですね
– 競合の方がいいみたいです
表面的な商談情報のやり取りは主となっているのです。
このような情報から、どのように営業組織の生産性・信頼性・差別化を高められるでしょうか?
必要な情報と必要ではない情報、そして、どのようにその情報を活用し活用しやすくするかが定められていません。
そのために、生産性・信頼性・差別化の向上につながっていないのです。


営業組織の「商談を生み出し、そして、成約していくプロセス」において、商談の生産性・信頼性・差別化を高める

見えづらく観察しづらいものではありますが、営業組織の「商談を生み出し、そして、成約していくプロセス」において生産性・信頼性・差別化を高めるためには、商談情報の規律(5S)が重要になります。


「商談を生み出し、そして、成約していく商談というものづくりの工程」における規律(5S)は下記のように定義できます。
【整理】 必要な情報は何かを決め、どこに置くか決める
【整頓】 所定された場所からすぐに使えるようにする
【清掃】 不必要な情報を除去すること
【清潔】 整理・整頓・清掃が繰り返し、必要性の高い情報を維持する
【躾】 決めたことを必ず守ること


営業組織において、営業情報の規律(5S)がしっかり行えるようにするには、まず商談の各工程において、必要な情報は何かを定義し、それをどこに置くかを決めます。そして、その活動を徹底するようにします。
この営業情報の規律(5S)そのものが構築されると、「現状を認識し、次に向かって対処する」という計画性が組織内で育まれます。
そして、経営者やマネージャー、そして営業担当者を苦しめている「意味のない無駄な作業」を少なくすることができます。


営業情報の規律(5S)のようなことは文書にしてまとめて、営業の誤解や勝手な解釈を少なくするための対策が必要なのですが、営業はあまりそのようなことが得意ではないらしく、「そこには、今後こんな情報を書くように!」「今後は、その情報は別の場所に書くように!」など、言いっぱなしで終わっています。
一例ですが、「商談」と「案件」の定義されていなく、営業マネジメントの使っている「商談」と「案件」の定義と営業たちの定義が合致していなく、「売上予測が大きく違ってしまっている」「商談を増やすための対策が間違ってしまっている」という問題を引き起こしています。
(そのために、私たちは、営業組織の生産性・信頼性・差別化を向上するために、SFA(Sales Force Automation)やExcelなどの商談管理ツールの最適化の支援を行っています。)


もともと営業現場では、規律(5S)が徹底しづらいのです。
そういう決定的な違いを認識した上でないと規律(5S)が活用できなくなってしまいます。
しかし、営業組織でも営業情報の規律(5S)が徹底できるようになれば、生産性・信頼性・差別化を格段に高めることができます。


(本コラムは、2008年9月21日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)

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